君の名は。」、これほど素直にハマるアニメ映画は本当に久しぶり・・・いや初めてかもしれません。
凄い作品と話題になっていた「君の名は。」を、土師祭でドタバタしていたのが一段落したので遅ればせながら観てきました。(この記事の前半はネタバレはないのでご安心を!)

新海誠監督の作品は2002年頃、「ほしのこえ」や、「Wind -a breath of heart-」のOPの映像美を観てから、その空と雲と青のグラデーションの美しさがとても印象に残り、学生時代のほとんどの期間、PCの壁紙に使ってたぐらいには好きですね。
なので、「秒速5センチメートル」で一瞬「久喜駅」が出たときは驚いたものですw

今回の「君の名は。」はTVCM等で、何処かで観たことあるような男女入れ替わり系の恋愛ものかな・・・、でも新海さんの映像美は観るべき・・・という感覚で観ましたが、まさか観終わった後の幸福感というか満足感というか・・・、期待以上の良いものが観れました。

背景映像も相変わらず素晴らしくて、ブルーレイが発売されたらシーンごとにじっくり観たいほど。
風景を映す何気ないシーンまで綺麗だから、目を逸らすのがもったいないぐらいです。
緻密とはいえ、実写で同じシーンを撮ろうとしてもこの作品の空気感(雰囲気)は出せないと思うので、アニメだからこその美しさですね。
さらにその映像美に合わせて、音楽を担当しているRADWIMPSの歌と映像との連動は本当に見事。
新海誠の真骨頂・集大成と言われるのも納得です。

この記事を書いている時点で「君の名は。」興収119億円とのこと。しかもまだまだ勢いは続くようです。
今までアニメ映画で100億円の興行収入を超えたのはジブリ映画のみ(ジブリ映画内だけでも5作品だけ)なので、ジブリ以外でそうゆう作品が出てきたことは朗報だと思います。
日本のアニメ映画史に、まさに新たな名を刻んだ作品になったわけです。

基本的に私は自分がいいと思ったものが他の人がいいと思うとは限らないので、あえて勧めるということはほとんどしないですが、「君の名は。」に関しては例外にしたい。
まだ観てない人も、「100億円突破のアニメがどの程度のものか観てやろうじゃないか」ぐらいの感覚でもいいので、一度観てみるのも一興ですよ〜^^

・・・というわけで、ここまではまだ観ていない人向けのネタバレなしの感想。
ここからは、久しぶりに良いもの観れたので、劇中で気になった事柄や感じたことを書き連ねてみます。


※以下は「君の名は。」のネタバレが含まれる内容になっています。
まだ 観ていない人はご理解の上で・・・、もしくはここで一旦読むのやめて、観に行った後にでもご覧下さい。


 
 


まず、OPがあるのは珍しいと思いました。
大抵はタイトル表示のみですぐ本編に入ったり、少しクレジットが入るぐらいですが、しっかりと歌付きであるのは本当に珍しい。
でも、プロローグの流星が流れる夜空と「まるで、夢の景色のように、ただひたすらに、美しい眺めだった」から入るRADWIMPSの「夢灯篭」への流れは、気持ちの良いぐらいスッと作品の世界に入る感じでした。


物語序盤が終わり、中盤に入る2人が入れ替わっていることを自覚したところからの楽曲「前前前世」との連動する約2分ほどの、タイムラプスのような時間の移り変わりの映像美と怒涛の状況把握、そしてテンポよく二人の息の合ったやり取り・・・。ずっと観ていたくなるような・・・微笑ましく思えてくる名シーン。
こうゆう場面に効果的に楽曲を入れ込んでくるところはさすが新海監督!としか言えない。

「君の名は。」で歌が流れるシーンは総じて名シーンですが、もちろんそれ以外にも印象的なシーンはあります。

三葉が、今頃瀧と奥寺先輩がデートをしていると思い涙を流し、気持ちに気付いた日。
東京へ、瀧に会いに行き、あてもない中で奇跡的に見つけた瀧の前に立ったときの三葉の想いと、勇気を出して声をかけた「覚えて、ない?」の言葉がOP直後の入れ替わりの始まった時のシーンに繋がる。
名前と共に組紐を渡したこのシーンが、"ムスビ"のポイントになっているわけですね。

次に、カタワレ時に二人が出会うシーン。
3年前の瀧ではなく、自分と入れ替わっていた、自分を知る瀧にようやく会えた喜びと驚きで泣きじゃくる三葉の気持ちは、東京で勇気を出して話しかけたときの気持ちが分かってる分、一入ですね。
微笑ながら言う瀧の「大変だったよ。お前、すげぇ遠くにいるから」のセリフは、距離だけではない、3年という縮められなかった時間の流れがあるからこそ印象に残ります。


組紐を返した時点で、ムスビのポイントは終わり、カタワレ時が終わるとともに、完全に夢から覚めた状態へ。
急速に忘れていくのも、夢から覚めたとき、だれもが感じたことのある「覚えていたいけど、うろ覚えで段々と何の夢を見たのかが思い出せなくなっていく感覚」ですね。
その感覚が分かるからこそ、大事な人、忘れたくない人、忘れちゃダメな人のはずなのに思い出せない瀧の気持ち(喪失感)を感じ取れる人も多かったのではないかと。

そして、「スパークル」が流れ始め、三葉たちの一連の作戦が始まる。
それにしても、どの歌も歌詞がまた良いですね。
じっくり歌詞の内容が分かると、より2人の心情・・・というか内面の気持ち的なものが分かります。
爆破直前のシーンと、歌の「ついに時はきた」の歌詞が静かに入るタイミングがピッタリでゾクッとしました。
この曲、間奏が長いですが、その間奏がそのまま大事な一連の場面のBGMになっているのにも感嘆です。

瀧と同様に名前を思い出せなくなっていることに気付く三葉。
「大事な人。忘れちゃダメな人。忘れたくなかった人。」それでも名前を思い出せず、落下も始まる隕石への焦りと恐怖で絶望しかけたとき、手のひらに大切な人が書いてくれたはずの名前を見る。
このシーンの直前から、「スパークル」は一旦止まります(CDも聴きましたが一度途切れます)。
三葉にとっては名前を知るための唯一の希望・・・その名前だと思った文字が大切な人がくれた、これ上のない大切な言葉だった。
この一連のシーンと曲タイミング、秀逸すぎです、脱帽です。一番盛り上がるであろうこれらのシーンがこの作品で一番心に響きました。
スパークルの終盤と、流星の落下までの、ただひたすらに美しい光景が重なるシーンは鳥肌モノでした。


瀧の時間から5年(隕石落下から8年)経った2021年12月。
瀧と三葉は同じ場所をすれ違う。
互いに誰かを探している気がするのに、何かが気になるのにそれが分からないまま離れていく。
ひょっとしたら、劇中ではそんなに描かれていないけど、2人は何度もすれ違っていたのかもしれませんね。

春(2022年?)になり瀧も社会人に。
そして、いつも通りの何気ない日、ふと並んで走る電車を見ると・・・。

劇中で、瀧に会いに行った際の三葉が確信していた「(私たちは、会えば絶対、すぐに分かる。)
たとえ記憶がなくても、ムスビが途切れていても、ここでその確信が証明されたわけですね。


雪の降る新宿のシーンから「なんでもないや」の曲が流れますが、この曲って劇中歌とエンディングの2つのバージョンがあるんですね。
この曲も「スパークル」同様、劇中とエンディングが切り替わる場面が大事な・・・というか最後の最後。

ここまでこの作品をずっと観てきた鑑賞側にとっては、瀧と三葉という人物のやり取りを見続けてきたわけですが、見方によっては入れ替わる「夢」をみていたということになる(逃げ遅れた歴史はなくなっている)わけで、実際の現実世界で(この作品の時間の流れという意味で)は、この二人はこの日ここで初めて出会ったということになるわけですね。
物語の最後に初めて出会い、互いに名前を聞く二人の間には風が通り過ぎる・・・

ここからの「なんでもないや」の曲でエンディングへ入っていく流れは、嗚呼・・・本当に良いものを観れたという幸福感でいっぱいでした。

青春ものに多いのは、切ない物語や意外性を求めてハッピーエンドにはならいものがよくありますが、「君の名は。」はこれでもかと言うぐらいストレートにハッピーエンドで描かれました。
もちろんいろんな結末があっていいと思いますが、このぐらい真っ直ぐな話も良いものですね。

おばあちゃんの言った通り、ムスビは途切れても、またつながる。
組紐「ムスビ」が紡ぐ、青春と歌と映像美が織りなす、ただひたすらに、美しい物語でした。


この終わり方には、もちろん若い人に共感を呼ぶと思いますが、「自分には赤い糸なんてない・・・」、「運命の人なんていない・・・」、「そんな人現れるわけがない・・・」と思って諦めている人、まだそうゆう人と出会っていない人に向けてのメッセージのようなものを感じます。
2022年の話というのも、まだこれから少し先の話・・・つまりはあなたがそんな出会いをするのはこの先の未来・・・という希望のような受け取り方もできますね。

実はチャンスは気付かないだけで、何度もすぐ近くにあるし、きっかけもいくらでもある。
運命の人はいて、日常の中で既にすぐそばをすれ違っていて、その人が自分の人生の中で探していた人なのかもしれない。
最後に必要なのは、声をかける(きっかけを作る)ほんのちょっとの勇気。


そうゆうものの可能性を感じさせてくれる、とても前向きな気分になる作品。
それが私にとっての「君の名は。」でした。


ふぅ〜・・・こんなレビューを書いたのは「時をかける少女」の感想を書いた時以来ですよ(*´ω`)
嗚呼・・・早くブルーレイが欲しい・・・。その前に劇場へまた観に行こっと♪ 


RADWIMPS 君の名は。(通常盤)



新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド